初挑戦で自転車初心者が第6回 Mt.富士ヒルクライムレースを完走するまでと攻略法

自転車レース初挑戦の初心者が第6回 Mt.富士ヒルクライムレースに参加。電車で輪行してレースに参加してゴールインするまでを時系列で追ってみた。


「宿へ」

宿泊した宿はリゾートイン芙蓉。電話で問い合わせてみると当日の宿泊客のほぼ全員がレース参加者ということ。従って宿の方も手慣れたもので、このようなものまで用意されている。

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「受付会場へ」

自転車や荷物を預け、受付会場の富士北麓公園へ徒歩で向かう。途中多くの自転車乗りの方とすれ違う。皆が早そうに見えてしまうのは仕方がない。このへんの精神状態の持ち方はマラソン大会ですっかり慣れっこになってしまった。公園までは比較的緩やかな坂道が続き、景色を見ながらのんびり歩いても30分ほどで到着できる。


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会場は既に数多くの人であふれ、有名自転車製造メーカや自転車関連用品サプライメーカなどのブースが軒を連ね、にぎやかな雰囲気。


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ブースの数は思ったより少なく、販売されている商品もそれなりの規模の自転車ショップに行けば購入できそうなありきりなものばかりで、値段もそうたいして安いわけではない。しかし、自転車だけもって手ぶらでレース参加してもここで買い物すれば事足りてしまうだけの豊富な品数はうれしい。忘れ物をしてしまった人にとっても大助かりなはず。


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限定品や記念品目的でウロウロしてみたがそういった類のものは見つけることはできなかった。このあたりまではまだ観光客気分。


黒山の人だかりができていたのでのぞきに行くと、なにやらすごい人による自転車乗り方実演講座が開かれていた。取り巻いてる人たちの顔つきは真剣そのもの。まったく浮かれた様子はない。それをみたとき「ここはレース会場、明日はレース」という事実を突きつけられたようでいやがおうにも緊張感が高まってきた。


「受付」

受付は会場奥にある。そこで主催者側から送られてきたハガキをゼッケンやRCチップなどに引き替えてもらう。万が一ハガキを忘れてしまっても200円で再発行してもらえるようだ。


自分の場合、自己申告タイムを「1時間15分」としていたため3000番台のゼッケンナンバーを受け取った。この時点では1時間15分という数字の意味を全くわかっていなかった。無知とはおそろしいものだ。


「受付後」

ゼッケンを受け取ったあと宿泊先に戻り預けていた荷物を部屋に運び込む。宿泊先の近隣にはすぐとなりの100円ショップをはじめとして、マクドナルド、藍屋などなんでも揃っている。VAAMなど特殊なものは置いてないないため必要であれば持参するか受付会場で購入する必要がある。

窓外には普段目にすることができない雄大な景色。しばしぼおっと眺めてしまった。


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自分たちが宿泊した宿の1Fは居酒屋も併設されている。ここで夕飯をすませることもできたが、味付けの濃いメニューは病み上がりの自分の体にはきつそうで、結局すぐ目の前にある藍屋で雑炊を食す。食事中緊張と体調不良で寡黙な自分に気がつく。豚カツ定食をモリモリ食べている相棒殿がうらやましかった。


食事を終え宿に戻ったあと強烈な眠気におそわれたが、自転車の組み立て、RCチップとゼッケンの取り付け、荷物の整理などをしてるうちに眠気が薄らいでしまった。しかたなしに1Fにある大浴場でひと風呂浴びることに。あとから考えればこれがよくなかった。眠いときに眠ってしまえばよかった。風呂は後回しでもよかったのだ。


「一睡もできないよ」

入浴後「さぁ眠るぞ、明日に備えるぞ」と気合いを入れて睡眠作業(?)に取りかかったが、うまくいかない。まるっきり眠たくならない。頭がさえてしまってる。さえ渡った頭で明日のレースのこと、自分の体調のことなど考えてもどうにもならないことを考えてしまうのだ。


とくに自分の体調に関しての疑心暗鬼ぶりはひどかった。風邪が治りきってない状態で果たしてどこまで走れるのか、レース中便意を催したらどうすればいいのか。便意だけは勘弁だ。なにゆえ便意がそこまで気になったのかは今をもってしてもよくわからない。そんなとりとめのない思考の渦に巻き込まれているうちに午前4時の起床アラームが鳴ってしまった。


結局一睡もしないままレースに挑むことになった。菓子パンで軽く朝食をとる。絶不調もいいところ。もうゲンナリでこれから坂道を自転車で登るなんて信じられなかった。相棒殿は熟睡できたようで元気そうだった。ちょっと恨めしい気持ちになる。


「いざスタート地点へ」

スタート地点へは自分は自転車でむかう。レース不参加の相棒殿は会場途中から出てる無料バスでスタート地点である北麓公園に届けてもらい、そこからまた別のバスに乗り換え応援観戦者用のバスで5合目のゴール地点に送り届けてもらうのだ。自分が宿を出た時間は5時半くらい。


準備運動代わりに心拍数を上げておこうと会場にむかう途中の坂道をかなりの速度でかけあがってみた。思ってたより傾斜がきつくたどり着く前にヘトヘト。眠い上にくたびれてグダグダな状態で場所取りをした。


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3000番台用のスペースは到着時はまだまだ空いていた。


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スタート時にはここがいっぱいになっていた。遅すぎて周りの迷惑なってはいかんということで後方に陣取る。そのあと防寒着などが納められた荷物を定められた荷物用カートに入れに行く。戻ってくると自転車の台数が増えているため自分の自転車の置き場所を一瞬見失ってしまう、単身初参加の方は注意が必要だ。実際に見失って探し回ってる方も数人おみかけした。


幸い天候に恵まれ陽射しが強く暑いほどの天気であった。3000番台のスタートは7時20分。はじめにアスリートクラスがスタートし、女子の選手がそれに5分遅れてスタートする。


「スタート前の待機時間」

この待機時間はつらかった。ポカポカ陽気のため眠くてどうしようもない上、踏ん張って目をあけると見渡すかぎり雑誌でしかお目にかかれない超がつく高級自転車と丸太のようなおみ足をしてる選手の方々が目に入ってしまう。これは精神衛生上実によろしくない光景だ。ここでやっと3000番台、1時間15分という数字の意味がわかった。


とりあえずストレッチをやったり周囲の人たちの話を聞きながらスタートまでの時間を過ごした。


スタート1分前くらいでビンディングをはめる音がし始めるのでそれに倣う。スタートしてすぐにタイム計測が行われるのではなく、スタート地点から1.3km離れた計測地点が実質的なスタート地点となる。


「スタート」

スタート直後すぐ飛ばすひとあれば、立ちションするひと、草むらの奥へ駆け込むひと(スタート前のトレイに間に合わなかったのだろうおそらく大のほうだ)こけてるひと、様々だ。


自分はどうにも体調が悪いためとにかく完走することを念頭にマイペースでのぼることにした。


のぼりはじめてすぐ気がついたことがあった。3000番台のひとたちは運転マナーがよく、なにより運転上手。無理に抜いていくようなことはせず抜くときは「右いきます!左いきます!」と声をかける。抜きっぷりも実に気持ちいい。体がぶれずすっと抜いていく。「料金所(スタート地点から600m先)からしんどい坂が続くから飛ばしすぎるなよ〜」と大声でアドバイスを送ってるひともいてずいぶんと助けられた。


実際料金所の坂ですでに息が上がってバテバテの人も散見できた。この時点ですでにとんでもない人数に抜かれていたが、気にすることなくマイペースでのぼる。スタート数分で168まで上がってしまった心拍数のことも気にしないことにした。


そのうち5分前スタートの女子選手をちらほら見かけるようになる。


「5km地点」

ここまではあっという間で「あれもう5km?」という感じ。とにかくマイペースを守った。この時点で男性選手は一人も抜いた記憶がない。ひたすら抜かれ続けの20分間であった。


「10km地点」

はじめの5kmが異常に短く感じたため、10km地点までは多少長く感じた。それでも「あぁもう半分くらいか、もっと走りたいな」などと考えるようになっていた。心拍数が落ち着いてきて体調不良を過度に気に病むこともなくなっていた。


この地点くらいから4000番台のひとたちに抜かれ始める。およそ半分の地点ということで一回目のスパートをかけはじめてるようだ。自分はとにかくマイペース。


「使用ギアとケイデンス

ケイデンスは85手前くらいで調整していた。ギアは終始インナーでアウターは一度も使用しなかった。


この日は34-23〜25Tをメインに走っていた。ということはギア比は1.38〜1.47、ロードタイプのタイヤ外径は678mm、ケイデンスは80〜85rpm、計算すると速度は13〜16km/hとなる。


自分のタイムは24kmを1時間33分
速度=距離/時間なので、
速度=15.483Km/h


となりギア比などから計算した数値とほぼ一致する。


ケイデンスを上げすぎず一定速度を保ち続けるという目標は達成できていたようだ。


「15km地点」

ここまでもあっという間。すこしづつ落ちてくる人を拾うようになる。それでも調子づくことなくマイペースを守った。


「17.5km地点」

同じようなペースの人が増えてきたためちょっとダレてきた。メリハリを効かすためにいったんスパートをかけてみる。しかしすぐに思い直しマイペースに戻す。自分の体の復調がまだ信じられなかった。


「20km地点」

あと約4kmではあるが、どんな坂が待ち構えているかわからないためここでもマイペースを守る。ここまでくるとさすがに頻繁に抜かれることはなくなっていた。パンフレットを読み返してみると19〜20km地点には標高差50m、最大斜度7.8%の山岳ポイント賞区間があるらしい。


息の乱れも足の疲労感もない。余力を残しすぎてるように思えたがとにかく完走するためのマイペースを保持する。このあたりで体力と根性の固まりみたいなクロスバイク乗りの人に抜かれ軽くショックをうける。サビサビのクロスですごい摩擦音をさせながら登っていく。すごい人がいるものだ。


「ゴール地点数キロ手前」

ここではじめて平地に入り左手には雄大な景色が広がっていた。こんな素晴らしいところを走らせてもらって感謝感謝、などとぼんやり考えていた横をすごい勢いで抜いていく人たちがいる。どうやらここはラストスパート地点のようだ。


「アクシデント」

周囲の勢いに感化され自分もスパートをしようとフロントギアをアウターに入れるためシフターに手をかけた。ここで一瞬悩んだ、シフトチェンジしたときチェーンが外れるのではなかろうか、と。そしてまさしくチェーンははずれた。


チェーンをはめるため自転車を左側に寄せ停止させた。ここでほんの数分間自転車に寄りかかりながらぼーっと景色を眺めてしまった。レースより景色が優先してしまったのだ。元々の趣味は登山なのでこれはやむを得ない。


そんなことをやってるうち次々に後続に抜かれ、どなたかの「大丈夫ですか〜」の声で我に返った。そそくさとチェーンを直し最後の登りを越えてゴールイン。チェーン外れのおかげでたっぷりと休息が取れたせいか必要以上に余裕のゴールインであった。


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「ゴール後」

ゴール後みた腕時計のタイムは1時間32分くらいであった。チェーン休憩がなければ30分を切るタイムでゴールできたかもしれないが、タイムは二の次でとにかく完走できたことがうれしかった。その後荷物置き場にむかい相棒殿と無事再会し祝福のお言葉をいただいた。


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富士山が間近にみえる。昨年友人と頂上まで登ったことが想起された。


「寒いよ」

ゴール後1時間くらいだべっていただろうか。日がかげって急激に冷えてきた。尋常な寒さではなかったため持ってきた防寒着を全て着込んで下りに備えた。5合目とはいえここは富士山なのだ。


「はて?と思ったこと」

帰りの下りを全速力でこぎながら下っていく人たち、あれはいったいぜんたいなんなのだ?レースはまだ続いてるの?と問いかけたくなるほどすさまじい勢いで追い抜いていく。あまりにおそろしいため途中にある展望台に待避し、人が引くまで待つことにした。この付近になるともう暖かい。


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ここも絶景なり。1時間ほど眼下に広がる景色をながめたあと北麓公園へと戻ってきた。


「北麓公園到着後」

まずは係員の方にRCチップを切ってもらう。これを忘れて帰ってしまうと正確なタイムを測定してもらえなくなってしまうので要注意。ゼッケンに付いているうどんチケットを渡せば吉田うどんが食べられる。とうがらしを多めにふりかけて体を温めよう。


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その後は帰宅するなり抽選会に参加するなり各自銘々に動けばよい。


「相棒殿よ」

相棒殿には感謝感謝だ。マネージャー役を完璧にこなしてくれた。ぼんやりしてる自分に代わっていろいろなフォローをしてもらい衷心より感謝してる。何人かから頂いた応援のお言葉もうれしかった。


「反省点1」

あまりに余力を残しすぎた。地形やペース配分がまったくわからないためとにかく遅く遅く進んだ。だからこそ完走できたのかもしれないが、今すぐもう一度同じコースを下りてのぼってしてみたい!と思ってしまうほど余力が残っていた。でもお尻は痛かった。


「反省点2」

ダンシングが一度もできなかった。相棒殿に聞いたところトップクラスの人たちはみんなダンシングをしていたらしい。ダンシングの練習をしてケースバイケースで使うことを覚えなければならない。


「反省点3」

サイクルトレーナーではなく、実際のヒルクライムの修練を積む必要がある。もちろんサイクルトレーナーの練習は無駄にはならないが本物の坂はやはり別物だ。「長くだらだら続く坂道」をのぼる練習は絶対に必要。当たり前だが1時間以上ひたすら坂道が続く。これは実際にやってみると精神的につらい。肉体的なつらさより精神的に堪える。繰り返すが目の前に続く道がずっと坂道なのだ。
     

「反省点4」

体調管理。これ絶対大事。直前に風邪をひかず、睡眠がきちんととれていたらと不毛で退廃的な思考循環をたどることになる。


「富士ヒルクライムレースを初挑戦で無難に完走するためには?」

自分の場合、体調に懐疑的であったためタイムを気にせずひたすら完走だけを目指し周囲のペースに流さないよう徹頭徹尾マイペース貫いた。最後の最後で周囲に流されラストスパートをかけてしまいチェーンが外れるというトラブルに見舞われた。周りのペースに影響されない、マイペースを死守、それが自分のような初挑戦の初心者が完走するための大鉄則だ。


給水もポイントのひとつ。給水所は2カ所用意されているが危険なため手渡しは不可。給水所に入って足を止めて飲むしかない。従って軽量化云々の前に持って登る水分量は多めに用意すべきだ。自分は500mlのボトル2本にVAAMアミノバリューをチャンポンさせたものを入れ、傾斜が緩やかになるのを見計らってこまめに口に含んだ。重量のせいで多少のタイムロスと体力の消耗はあるかもしれないが完走できないよりはいい。ソイジョイやチョコレートなどの食料も持ち込んだがこちらは食べることなく終わってしまった。